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和紙作家 堀木 エリ子 氏

時を経てなお美しい、人の手が継いできた本物の気品を。

株式会社 堀木エリ子&アソシエイツ 和紙作家

和紙作家

堀木 エリ子 氏

Washi Creator, Eriko Horiki

「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、2700×2100mmを基本サイズとしたオリジナル和紙を制作。和紙インテリアアートの企画・制作から施工までを手掛ける。近年の作品は「東京ミッドタウン日比谷」「在日フランス大使館大使公邸」「成田国際空港第一ターミナル到着ロビー」のアートワーク、N.Y.カーネギーホールでの「YO-YO MAチェロコンサート」の舞台美術等。著書多数。

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手漉き和紙との運命的な出会いから、継承の使命に駆られて。

二十代にご縁があって、事務職の誘いを受けて転職したのがはじまりでした。その企業が、たまたま手漉き和紙の開発会社だったのです。そこで、越前和紙が人の手で作られている姿に心を打たれました。工房は福井県武生にあります。極寒の中、痛いほどの水を使って黙々と作業をする職人さんの姿。「寒漉き」、つまり紙漉きは寒いほどよいといわれ、過酷な環境の中で長年受け継がれてきたのでした。
ところがその2年後、その手漉き和紙の会社は閉鎖されることになります。機械漉きの量産品との価格競争が原因でした。その時、衝撃とともに、腹の底から湧き上がるパッションを感じました。こうして継承されてきた尊い手漉き和紙の伝統が絶えていいものかと。そして原点に立返って考えました、手漉き和紙と機械和紙の違いは何かと。大きく二点ありました。一つは使うほどに質感と味わいが増すこと。もう一つは、経年劣化しにくく強度が落ちないという点です。この優れた特性を活かすことができる場はどこか。それは、便箋など一回だけ使用するものでなく、長年使われる建築空間だと考え、何とか継承の道を探ろうと思い立ったのです。

光によって「うつろう和紙」を制作、そして伝わるまでの道のり。

そうして一念発起、文化や伝統に理解のある呉服問屋の支援も受けながら、ブランドを立ち上げて取り組みがはじまりました。それまで建築空間でも襖判が最大でしたが、畳三畳分の大きさのインテリア向けの和紙を制作するなど、試行錯誤を続け、光によって「うつろう和紙」を提案することとしました。
和室の障子も、1日の太陽の光を受けて室内で、その影の濃さや形を変える。太陽光線が入らない空間でも調光器やタイマーと連動して情緒や情感が生ずる空間を彩ることができないか。この考えを具現化しました。
これまでないダイナミックな和紙による光の環境素材として、全国、世界へと作品を送り出すことができるようになりました。

越前と京都、二つの工房から、伝統と創意工夫の和紙作品を。

越前の工房では2700×2100mmの大判の和紙を漉くことができ、それが私共の作品の基本寸法になっています。紙漉きの日は、私を含め制作担当社員と現地の職人さんたちが、約10人がかりで力を合わせて作品を漉き上げていきます。
そのときに色を流し入れたり、繊維質の素材を入れたり、目的とするデザインに沿ってさまざまな創意を凝らしますが、人の手で行うことですから、タイミングのずれや歪みがおこります。
しかし、そうした不均質なところにも表情が生まれ、人間の力だけでは生み出すことが出来ない、偶然性による感動的な質感を得ることが出来ます。京都の工房では10m以上の和紙を革新的な手法で制作しています。また、丸みのある立体の造形も骨組みを使わず立体的に形成して漉き上げていることから、一つひとつに苦労があるものです。けれども、それぞれお客様の要望を聞いて、難題であっても新たな考えや手法によって実現していく、という意味では、開発者という意識も持っています。忙しく日々を過ごす人々に、手漉き和紙による居心地のよい空気感や、時を経てなお美しい、気品のある質感をお届けできれば幸せです。

Collaboration 堀木 エリ子 氏の参加物件

ベラジオ 雅び 京都清水五条