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唐紙師 トト アキヒコ 氏

日本の四季の美と、安らぎの祈りを、唐紙に込めて。

雲母唐長 唐紙師

唐紙師

トト アキヒコ 氏

Karakami artisan, Akihiko Toto

従来の唐長の唐紙を継承した襖や建具、壁紙、唐紙を用いたパネルやランプなど、現代の暮らしに合うさまざまな唐紙を制作。唐紙をアートにした第一人者であり、唐紙の芸術性を追求し、自らの指で染めていく独自の技法「しふく Shifuku 刷り」や「風祈」から生まれる深淵な青い唐紙作品は、八百万の神様や精霊とともに手がけた詩情が宿るスピリチュアルな〈トトブルー〉と愛され、公共、商業施設、個人邸に納められる。
2018年、百年後の京都に宝(心)を遺す「平成の百文様プロジェクト」を提唱・主宰。
名刹養源院に奉納された作品「星に願いを」は、俵屋宗達の重要文化財「唐獅子図」と並んでいる他、2020年には、世界平和への祈りを宿した22メートルに及ぶ史上最大の唐紙アート作品「Universal Symphony」を手がける。著書に『日本の文様ものがたり』(講談社)ほか。

「唐紙」に込められてきた、日本古来の自然観と祈りを継ぐ。

「唐紙」はそもそも、平安時代に伝わった料紙を起源をとし、後に室内装飾として発展しました。
〈雲母唐長〉は、寛永元年(1624年)創業し、江戸から今日まで約400年、ただ一軒だけ続いている唐紙屋を継承。先祖代々継承する板木も多く残っており、美しい文様が彫られた板木には自然と四季を愛でる日本古来の世界観がこめられています。
平安の昔から変わらない、自然には八百万のカミが宿るという美の愛で方です。ですから、板木にみられる文様は単にデザインというものではなく、自然をかたどった紋の一つひとつに魂や祈り、物語やメッセージが宿っています。
そうした、見えない力を帯びた板木の力を和紙に写しとる。それが、〈雲母唐長〉の唐紙なのです。
ところが生活の近代化とともに、住まいに和室が少なくなり、今では和室が一つもないという住居も少なくありません。すると、和室や襖とともに、唐紙も衰退してしまう。
400年の歴史も伝統文化もついえてしまう、と考えた時に、唐紙を「アート」として提案できないかと思い立ちました。

〈雲母唐長〉の「編集」思考とともに、「唐紙ルネッサンス」へ。

伝統文化というものは、唐紙と襖紙のように、同じ形で継承困難となったとき、新たな発想で受け継がれていくものではないでしょうか。
とはいえ容易なことではなく、私も唐紙を襖紙からアートへと仕立てる上で、熟慮が必要でした。変化は変質ではなく、進化すべきだと考えます。
変わらないために変わり続けることが大事です。従来の襖のように板木を用いて摺る世界では、文様が単なるデザイン·パターンとしてみられてしまう。
もちろん、襖としての美しさは特筆すべきですが、より唐紙の精神性を伝えるために、文様を組み合わせることにより絵画性と、そこに「詩 ポエジー」を生み出したいと考えました。
これまでの絵画でも文様でもない、抽象的なパターンでもない、そういう新しい美の創造をする。これは「編集」という考え方だと捉えています。そうして作った新たな美(アート)を、人の生活空間の中にしつらえることによって、今に生きるインテリアとなって受け継がれるのではないか。
和室の襖だけではなく、洋室や商業施設などあらゆる空間を彩るアートとして現代社会と唐紙を向き合わせつつ、今までにはない新しいジャンルの美術を創ったことは、結果的に未来に唐紙文化を伝えることにつながったのです。

伝統の技法を受け継ぎつつ、新しい「詩 ポエジー」を紡ぐ創作を。

文様の「組み合わせ」で、新たな「物語」「詩 ポエジー」を創り出すのは、とても愉しいことです。
色々なケースがありますが、たとえば〈雲母唐長〉でお客様を迎える部屋「閑室」の壁面一面にしつらえた「季風の道」。
一見、萩やススキ、月の配置が見えていて「秋」景色のように見えます。しかし、雲母(きら)の陰影により、角度によって見えるように、ワラビ·桜(春)、楓(夏)、雪(冬)をちりばめて四季を描いています。
なぜなら、見えている「秋」も今は見えていない春夏冬の季節があるおかげなのだといつも気づかせてくれるように。
また、トトブルーと呼ばれる作品の一つは、自らの指で何千回何万回も点描を重ね染めてゆく独自の技法「しふく刷り」から生まれる深淵なる青色に水を湛え、無数の渦紋を重ね描きスパークさせ、やがて龍になるカミさまの使いである龍亀が描かれているこの作品は、水のカミさまとともに在ることを願って「ミズハ」と名付けました。このように、文様に意味や祈りを組み合わせた図案にポエジーをもたらして創作していく。
これからも、エントランスや住まいを彩る唐紙を、よい「気」と安らぎがゆったりめぐるよう祈りをこめて制作していきたく思います。

Collaboration トト アキヒコ 氏の参加物件

ベラジオ 雅び 京都西院

ベラジオ 雅び 四条通Ⅱ