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建築家 山野 成侑 氏

宮廷と町家の文化、その美しい融合を目指して。

山野設計株式会社 代表取締役社長 建築家

建築士

山野 成侑 氏

Architect, Shigeyuki Yamano

福岡県立小倉高等学校卒業・京都工芸繊維大学 建築工芸学科卒業。1985年、京都にて山野設計株式会社を創立。「京料理六盛」をはじめとする店舗デザインからオフィスビル・宿泊施設・共同住宅・個人住宅等の設計を手がける。京都SACRAビル改装設計デザインで第一回京都市都市景観賞を受賞。「ベラジオ」マンション・シリーズの設計デザインも数多く手がける。

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外観デザインには、街並みに溶け込む京町屋の佇まいを。

“雅び”というコンセプトによる集合住宅を。この話を伺った時に、まず思い浮かべたのは、京都の伝統には「宮廷文化」と「町家文化」があるということでした。
いずれも京都固有の文化ですが、それぞれの時代の美しさを物語るものです。この異なる二つの伝統美をいかにして一つの建築に仕立てるか、とても興味深い課題であると思いました。
そこで、考え方の基本として、今も多くの町家が残る京都の街並みに溶け合うよう、外観は京町家のデザイン要素を全面に採り入れ、エントランスから中の空間や時間は宮廷の優雅な美と精神性を表現する。
そのように方向づけると、具体的なプランが広がっていきました。建物を囲む敷地には、たとえば竹垣や行灯、石畳や飛び石。外観には、庇に瓦、白壁に格子、軒行灯や暖簾もいいですね。

エントランスの中は優雅な”雅び”の美しさを。

そして、暮らす人、訪れる人を迎えるエントランスからは都の“雅び”が持つゆるやかな時で包んでいけたらと思います。
“雅び”とは、宮中の優雅な日々から生まれた、四季折々の時を愛しむ穏やかな心のありようではないでしょうか。ですからビジーな日常の中で、帰ってきて一歩足を踏み入れると、季節や文化的時間を過ごす静かな心になれる、そんな空間でありたい。
たとえばエントランス・ギャラリーを作り、京の伝統を継承するアーティストの作品で彩ることができたら。また、共用スペースには、茶室に代表される数寄屋造り、聚楽壁、円窓、坪庭、灯籠……そういった閑雅な時を過ごすために生まれたしつらいを採り入れたり、壁の色彩を日本の伝統色から選んでみたり。
“雅び”とは何か、“雅び”が本来どういう心持ちであるのか、あらためて考えていくことに意義があるのではと考えています。京のアーティストたちに加え、学生のみなさんと一緒に取り組む機会もあれば面白いですね。

景観条例を守るだけではなく、日本の美の探求へ。

それからもう一つ。京都の建築文化を継承する考え方については、まず京都市新景観政策が定められて約10年経つ背景があります。
色使いの規制や、木材の使用義務など、建物の外観についてはデザイン=美術の規制があり、同じような建物ばかりになりました。
同じ古都であるパリの旧市街も同じように、建築家によるデザインは認められず、内装だけ設計や装飾の手を加えることができます。
それは歴史的な建物の姿を受け継ぐ目的がありますが、はたして形を揃えて遺すだけでいいのか?という問いもあり、同じ京都の街並みに溶け込む建築でも、可能な限りで創造性のある試みを目指すことも大切なのではないかと考えてきました。
この思いも、新しく生まれる「ベラジオ 雅び」への取り組みに活かしていくことができたらと思います。