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油画 進士 三紗 氏

自然のちからによって形を変えていく、川の石の尊さ。

油画

油画

進士 三紗 氏

Oil Painter, Misa Shinshi

1998年京都府出身。
2021年京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業。
フリーランスフォトグラファーとしてエディトリアルなどでクライアントワークを行う傍ら、 油絵と写真の両方のジャンルで表現活動を行っている。
現代の消費社会からの原点回帰として、時間の永遠性と物質の循環をテーマに作品制作を行う。
画では石をモチーフにし、自然界と自己の相互的な作用を絵画に落とし込む試みを続けている。

生まれ育った京都・鴨川、そこに石があり、形の尊さがあった。

幼い頃から鴨川で遊び、石を見て触っては、その手触りや形を感じていました。さまざまな色も発見しました。濃い色や白だけでなく、さまざまなパステル色も。それは私の原体験だったのでしょう、大学に入って絵を描くようになってから、これまでひたすらに鴨川の石と水の流れを描いています。
川の上流から下流に向かう中で自然の作用によって丸みを帯びる石。それは、時間の永遠性と物質の循環を目の前で感じさせてくれるものです。山から海へ、岩から石へ、石から砂へ。そして砂が圧力で押し固められ、また山に、大地になる。とてつもなく長い時間をかけて循環するこの大地を尊び、その過程を描くことは私にとっての自然への祈りでもあります。
そして、石を見続けるなかで、外からのちからによって削れて作られる形に尊さを感じるようになり、自分自身にも重ね合わせるようになりました。もともと自分から何かを主張したり決め付けたりすることが苦手だったこともあるのでしょう。何かに出会ったり発見したりする体験が、自分を削って自然にかたちを与えてくれるという発想が不思議と身についていきました。

鴨川が語りかける人と自然の歴史に耳を傾け、描き続けたい。

今もよく行く鴨川の流れは、人の生活や文化の物語を記憶しています。今私たちが当たり前のように行なっている生活は、先人たちが自然とともに作り上げてきたものの上に成り立っています。10本の川があれば10通りの歴史や文化があるため、私は川のある地形やその土地の文化、それによって醸し出される街の雰囲気を、絵を描く際の色選びなどに起用しています。
鴨川は、平安遷都以来、京の都に住む人々の暮らしに密接に関わってきました。生活用水や潅漑用水として人々の暮らしを支えるとともに、茶の湯に代表される京都の水文化や織物・食など、様々な伝統産業を育んできました。さらに鴨川の河原は、都における数少ない広い空間であったことから、店や芝居小屋が建ち並び、多くの人々が集い、そこから能楽や歌舞伎など多くの文化が生まれたそうです。
今日の京都の文化を生み出した鴨川という存在は、今では訪れる人々の心にそっと寄り添い支えとなってくれているように感じます。私も幼少から青春と、ここでどれだけ豊かな時間を過ごしたことでしょう。これからも、どんな時もどんな人も受け入れてくれるオアシスのような鴨川の存在を祈り、大切に描いていきたいと思います。

京都の自然が、大きな時の流れを思い出させてくれるように。

現代における生活は、目まぐるしく移り変わる景色や環境とともにあることも多いと思います。私も日々に追われる中で、つい視野が狭くなり身体に力が入ってしまうことも。そんな時、自然と触れ、川の流れを見ることで、緊張状態が解きほぐされます。雄大な時間軸で動き続ける大地に思いを馳せることで、心を広げてくれる感覚。それを私の絵に少しでも感じていただけたら、そう思いながら描いています。このエントランスギャラリーが暮らしの中で、ふっと自然に立ち返るような場になれば心からうれしい。
今年秋からパリに留学しますが、新たな川の流れに入って自分がまた少し削られてみたい、という思いでいます。そしてまた京都に戻ってきて、新しい目でこの街を、鴨川を眺め、どのような絵が描けるか自分でも楽しみです。一度外に出ることで、いっそう京都の自然を感受することができればと願っています。

Collaboration 進士 三紗 氏の参加物件

ベラジオ 雅び 京都洛央